2015年8月7日金曜日

文教厚生委員会の視察研修

 研修を終えて、次のような報告書を提出しました。


視察研修報告

平成27731

浩二郎 委員長 

文教厚生委員会委員  北 野 正 徳

<富山市>

[調査項目]

富山市におけるSSW配置事業について

[説明および調査の概要]

 富山市においては8名のSSW(スクールソーシャルワーカー)が配置され、教育相談体制が整備されている。この8名は男性5人、女性3人で構成され、社会福祉士や精神保健福祉士などの有資格者である(1名は無資格ではあるが経験豊富との事)。いじめや不登校、暴力行為、児童虐待等の課題に対応し、特に社会福祉の専門知識・技術を用いて、家庭内にさえ入り込み、課題解決に努めることが特徴である。
 問題行動は社会や環境によって惹起されているというのが基本的な考えで、子供・保護者と学校の間に存在し、SSWが担う役割は極めて大きい。また学校・教師が担任制で1年を単位にするのに対し、SSWは複数年度に渡り課題に取り組み、長期的視野で対処し、子供たちを社会に送り出すこととなる。さらに家庭の貧困問題にも踏み込み解決策を探すなど、SSWならではの活動の意義は大きい。
 SSW制度の課題としてSSWは専門職であるのに対しそれを管理する職には人事異動もあり、管理職が変わるたびに制度の活用法に濃淡が出る事となる。またフットワークが軽いSSWに対し学校の動きが鈍い、担任との協力が十分に得られないなどの問題も見られる。またSSWはほとんどがこの職のみでの十分な収入が得られない事もあり、他の職業との兼業となっている。今後SSWの資質向上、その前提としての報酬増(謝金対応)、予算の確保などの課題もある。
  佐世保市においては全国的に耳目を集めた事件もあり、現状の活用が充分であるのか、検討したい。富山市においては、しっかりとした成果を上げるための取り組みがなされている事を実感した。

<富山市>

[調査項目]

富山市学習支援事業:富山市福祉奨学資金給付事業

[説明及び調査の概要]

 富山市においては、生活保護世帯等の子供達が高等学校等へ進学し充実した学校生活をおくることを通して、将来への希望を持って修学・就労できるよう支援することを目的として、学習支援事業が実施されている。まずは家庭相談員が家庭で抱える教育上の問題の個別相談に応じ、教員OBや大学生による学習支援員が家庭を訪問し個別指導を行っている。さらに卒業後、介護・福祉・医療の仕事を志す資格取得の修学援助を実施している。また、毎月生活費も支給されている。
 こうした事業は市長のリーダーシップで推進されており、首長は行政機構のトップであると同時に政治家として、希望ある将来を提示することも大事な使命であり、その象徴的施策でもあるのだと思う。



<富山市>

[調査項目]

富山型デイサービスについて

[説明及び調査の概要]

 国の制度では、高齢者=老人福祉法、身体障害者=身体障害者福祉法、知的障害者=知的障害者福祉法、障害児=児童福祉法の各法により、施設整備や人員基準が定められていた。そうした中、冨山赤十字病院を退職された惣万佳代子さんを始め三人の看護師さんが「デイケアハウスこのゆびとーまれ」を開所され、赤ちゃんからお年寄りまで、障害のあるなしにかかわらず受け入れる事を始められた。当然この福祉サービスには行政からの支援は無かった。ここから地域と密着した小規模な施設、高齢者・身体障害者・知的障害者・心身障害児・乳幼児を同じ施設で同時に処遇する共生ケア、をキーワードとする後に「冨山型福祉サービス」として全国展開される制度が現場からスタートした。
 平成8年度から障害者()へのサービスとして、富山市単独の事業として「富山市在宅障害者()デイケア事業」が始まり、平成9年度からは高齢者のデイサービスへの補助金交付が実現した。平成12年度に介護保険制度がスタートした。その後平成15年に「富山型デイサービス推進特区」が認定され、介護保険上の指定通所介護事業者等での知的障害者、障害児のデイサービスが可能となった。そして地域限定の特区からさらに規制緩和としての全国展開がされるようになった。
 富山型が確立した背景としては、富山市においては持ち家の比率が高く、また二世代三世代の多世代同居が多く、デイサービスのニーズが高かった事があげられる。ただ高齢者と障害者の比率は圧倒的に高齢者が多く、富山型の施設において利用が高齢者だけで、障害者の利用がない事例も散見されるとの事であった。富山市では富山型の施設整備に助成制度があり、また「富山型デイサービス起業家育成講座」などの人材育成策が図られているものの、制度と現状、利用者のニーズが少しずつかみ合わなくなっている事も事実の様である。草創期の理念型から成熟期のビジネス型へ進展し、富山型も、転換期を迎えている。



<長野市>

[調査項目]

 長野市の健康づくり

[説明及び調査の概要]
 国では平成20年度の医療制度改革により、糖尿病等の予防に着目した特定健康診査、特定保健指導の実施を、医療保険者に義務付けた。また平成19年度には「がん対策推進基本計画」や「自殺総合対策大綱」を策定し、地方自治体に対して、生活習慣病の予防のための普及啓発やがん対策及び自殺対策等のより一層の充実を求めた。
 こうした国の動向を受け計画期間平成23年度から28年度までとし、「新・健康ながの21」が策定された。
 「働き盛り世代の元気」をテーマとして、健康意識と生活習慣の個人差による健康格差を生じていることを課題としてとらえている。自分の健康状態を理解し、症状がなくても生活改善ができる人と、症状が出るまで放置する人、の二極化、また検診受信者、混交講座等の参加者の固定化などの問題がこうした課題の背景にある。そこで健康格差の縮小と重症化予防に向け、資料なども工夫され普及啓発が進められている。

 アンケート調査や検診結果などにより「新・健康ながの21」の中間評価が行われている。生活習慣病予防対策における肥満の割合、乳がん・子宮がん検診率、40歳・50歳の歯周病の割合など、一部に策定時より悪化した項目も見られるが、全般的に施策の良い効果が表れている。