視察報告書
平成29年7月26日
都市整備委員会委員長 様
都市整備委員会 委員 北野正徳
【東京都大田区役所及び神奈川県横須賀市】
調査項目
「空き家対策について」
説明および調査の概要
1.大田区における空き家の状況
総住宅戸数416,610戸に対し空き家は61,790戸、14.8%となっており、全国平均の13.5%を上回っている。区内に満遍なく存在し、樹木の繁茂、動物の住み着き、擁壁やブロック塀の老朽化などが生じている。
2. 横須賀市における空き家の状況
総住宅戸数196,300戸に対し空き家は28,830戸、14.7%となっている。横須賀市においては佐世保市同様に港町特有の狭隘な坂道に接する住宅が交通不便により空き家化するケースも多い。
3.大田区における代執行
大田区では平成25年4月より「空き家の適正管理に関する条例」を施行している。平成16年頃空き家化した物件がその後徐々に苦情が寄せられるようになり、平成18年に指導が始まり、平成26年1月に条例に基づく判定委員会において措置命令が発せられ、平成26年5月行政代執行が都内で初めて行われた。
なお、空き家等対策の推進に関する特別措置法が施行され、この条例は平成28年9月に廃止されている。
4.横須賀市における代執行
横須賀市では平成24年頃より危険建物としての苦情が寄せられ始めた建物に対し、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行された平成27年2月以降、全国初めてのケースとして同法に基づく行政代執行での取り壊しが行われた。
5.空き家対策
両自治体ともに相談体制を整備し、相談会を開催し、需要の掘り起こしや空き家になる前の流動化策、そしてマッチングなどが行われている。大田区においては子育て支援施設などの行政的な利用が行われ、横須賀市においては地元大学生が生活の拠点を置き地域と交流する事で地域の活力を維持しようと取り組まれている。
6.国の政策
建物がある土地が更地になれば固定資産税は6倍になる。都市計画税は3倍になる。相続になれば建物解体には関係者の同意が必要になる。こうした事から建物が老朽化し危険な特定空き家になる。横須賀市の担当者は、いっそこの新築住宅を取得しやすくしている税制を廃止すべきとも主張していた。
7.総括
まず「空き家対策」において先進地はない、と言うのが実感である。日本全国同時にこの問題は進行し、これからさらに顕在化しようとしている。
中古住宅が流通する仕組み、そのためには住宅そのものが流通するに足りる資産価値の高い長期優良住宅である方が良い。交通の利便性が悪くハードとしての価値が低い住宅が淘汰され、そうした家屋に入れ替わるには長い年月が必要である。その過程で中には相続が順調に行かず「特定空き家」化する場合もある。
前者において民間の事業活動として流通する経済的仕組みと、後者において半ば強制的にでも解体更地化する公的仕組みが必要である。強制的に解体する公的仕組みは、最終的な手段である行政代執行においても限界がある。民間の事業活動の助長については所有者情報やなぜその物件が塩漬け状態にあるのか、ある程度行政においてその情報を集約しやすくなっており、この点において成果が期待できるのではないかと思われる。
要は行政の一歩踏み込む意欲ではないかと思われる。
視察報告書
平成29年7月26日
都市整備委員会委員長 様
都市整備委員会 委員 北野正徳
【千葉県松戸市】
調査項目
「公園整備ガイドラインについて」
説明および調査の概要
1.公園再整備ガイドライン策定の背景・経緯・目的
問題は公園そのものの老朽化である。そして公園を使う側の高齢化、更には少子化の問題があり、そうした事に対応する公園への再整備が必要である。
2.ガイドラインの特徴と住民意見の集約
「地域に愛され地域とともに成長する公園」を再整備の基本理念としている。その具体的なプランの作成に「ワークショップ」による住民の意見の集約を行う事が定められた。
3.ワークショップについて
再整備対象公園は11地区15公園である。一つの公園再整備にワークショップを4回開催し、基本プランをまとめる事としている。その内の一つ、金ケ作公園再整備においては関係者約40名が、4回のワークショップで意見を集約している。
4.課題
まずワークショップと言う手法が住民の意見を集約するベストな方法なのか、松戸市においては硬直的に考えることなく現実に即して換骨奪胎し、次の公園再整備においてはアンケートによる意見集約に重点を置き、ワークショップの開催は1回のみと言う事であった。また再整備対象である「地域公園」よりも小さい公園の方が圧倒的に苦情や要望が多いということも認識され、こちらの方を優先すべきではないかと言う疑問も現場においては語られている。
さらには国の考えとしては地域防災機能の充実が示されているが、現実的には近隣に小学校などの避難施設があり、例えば簡易かまどのような施設が公園に必要か、意見の集約が難しいとの意見も出されている。
5.まとめ
佐世保市においても公共施設の再整備が進められている。コンサルが入り、ワークショップが開催されている。松戸市の担当者においては公園と言う切り口での公共施設再整備の進め方の手法において自律的に再検討を行っているようであるが、佐世保市においてはどうなのか、ワークショップと言う手法が適切か、そこでどのような情報が集約され、その後に共有されているのか、気になるところであり、今後を注視しなければと思う。